
ヒトゲノムプロジェクトにより2003年4月にヒト遺伝子の99%が公開されました。それにより多くの情報がもたらされ、医学や生物学は目覚しい進歩を遂げました。しかしながらがんや脳梗塞を代表とする多くの難病は、治療はおろか診断や予後の予測をすることさえ困難な状況が続いています。現在では、真に病気を解明するためには遺伝情報に加え、実際の生体反応を司っている蛋白質を網羅的に解析することが必要であると認識されています。
“プロテオミクス”とは、遺伝子解析を表す“ゲノミクス”に対して作られた言葉であり、「ある状態における生体内で発現している蛋白質の全体像を解明する研究」を意味します。蛋白質の発現パターンは個人の体調変化によって大きく変化することが知られています。従って、蛋白質の発現パターンを解析すれば、その人は今どのような体調にあるのか(診断)、今後どうなっていくのか(予測)を知ることが可能になると考えられています。
私たちモレキュエンスではプロテオミクス技術を駆使し、目的とする疾患の診断や予測を可能にするバイオマーカーの探索に挑戦しています。
二次元電気泳動法は蛋白質の分離手法としては最高の分離能を有する解析法です。一方で二次元電気泳動には再現性やスループット性に問題があり、多検体解析には適していないと言われてきました。しかしながら、解析に用いる試薬、蛋白質分離担体の開発・改良によって再現性が飛躍的に向上し、精度の高い比較解析が可能となりました。これに加えて、私たちは、二次元電気泳動実験に関する一連の実験操作を見直し、独自技術を開発することによって、ハイスループットで再現性の高い二次元電気泳動実験を実現しています。二次元電気泳動実験から得られるデータは、バイオインフォマティクスを用いることで多くの有用な情報に変換することができます。
近年の質量分析器の感度・精度の向上と方法論の開発により、質量分析器を用いたプロテオミクス研究は、バイオマーカー探索の主流になっています。しかし、多くの研究者たちが実験から得られた膨大な量の情報を有効に活用することができず、バイオマーカー探索に悪戦苦闘しています。私たちは、実験系の構築からその後のデータ解釈にいたるまで、常に実験者とインフォマティシャンが協力して行うことにより、効率よくできるだけ多くの有用な情報を抽出し、その情報を有効に活用することにより、効率的なバイオマーカー探索システムを構築しています。

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